近年、そしてこれからの彫師の在り方について考えてみる

こんばんは、HARUです。

 

 

最近、数年前と比べて本当に彫師やタトゥースタジオが増えたと強く感じています。
私自身、彫師として今年で5年目になりますが、このわずか5年の間でも、タトゥー業界は確実に大きく変化してきました。

 

 

少し前までは、彫師の数自体が今ほど多くなく、「待っていればお客さんが来る」時代も確かにあったと思います。

 

 

当時は、彫師という仕事に対して「怖い」「いかつい」といったイメージが世間的にも強く、結果的に彫師側の立場が強くなりやすい環境でした。

 

多少態度が横柄でも仕事が成立してしまう彫師が存在していたのも事実だと思います。

 

 

また、今ほど技術や道具が発展していなかったため、現在ほど高いクオリティが求められることもなく、技術が未熟でも仕事を得ることができた時代でもありました。

 

 

 

 

しかし、今はまったく違います。

 

 

 

デビュー当初から非常に高い技術力を持つ彫師が増え、タトゥースタジオの数も日本全国で大きく増えました。

ジャンルも細分化され、それぞれに特化した彫師が存在しています。

 

地方ではまだ差があるかもしれませんが、少なくとも都心部では、彫師という仕事はすでに飽和状態に近いと感じています。

需要と供給のバランスは、確実に変わってきています。

 

 

 

これからは、「待っていればお客さんが来る」時代ではありません。

そして、「ただ上手い彫師」というだけでは、選ばれなくなっていくと思います。

 

なぜなら、業界全体の最低ラインがすでにかなり引き上げられているからです。上手いのは、もう当たり前です。

 

 

 

 

 

 

以前、お客さんとの会話の中で印象的だった出来事があります。

 

他店に通っていた方が、うちのスタジオに来てくださるようになり、前に通っていたスタジオの話を伺った時のことです。

 

そのスタジオはとても有名で、彫師さんも技術力が高く、SNSのフォロワーも多い、いわゆる有名彫師でした。

実際に入っていたタトゥーを拝見すると、クオリティは本当に高く、技術的には素晴らしい作品でした。

 

 

 

それでもそのお客さんは、そのタトゥーを「気に入っていない」と言いました。

 

理由は、要望を一切聞いてもらえなかったことでした。

 

こだわりたい部分を伝えると否定され、
「それは違う」「それはやらない」と一方的に切られ、入れたいと言っていないモチーフを勝手に付け足され、
最終的には「あなたは細かすぎる」と言われたそうです。

 

 

 

タトゥーは、お客さんの肌に一生残るものです。
彫師は確かに作品を作る側ですが、そのキャンバスはお客さん自身の人生そのものです。

 

彫師の作家性や表現が大切なのは分かります。
でも、それはお客さんの想いやこだわりを否定していい理由にはならないと、私は思います。

 

タトゥーは物理的に、お客さんの肌はキャンバスですが、その肌は彫師のものではありません。
そのお身体も、人生も、覚悟も、お客さん自身のものです。

 

 

 

彫師が作品を作れるのは、「この人に任せたい」と信頼してもらえているからです。

 

自分の表現ばかりに意識が向き、お客さんの人生や感情を軽視してしまった瞬間、それはもうプロの仕事ではないと思います。

 

 

 

最近の業界を見ていると、クオリティの高さや奇抜さ、彫師同士の評価ばかりが重視されて、肝心のお客さんが置いてけぼりになっているように感じることがあります。

 

彫師側が満足しても、お客さんが満足していなければ、それは失敗です。

 

 

 

今はSNSが集客の中心になり、フォロワー数や再生回数といった分かりやすい数字が目に入りやすい時代です。

でも、知名度が高いことやフォロワーが多いことが、そのまま「良い彫師」「偉い彫師」だとは、私は思いません。

 

本当に大切なのは、数あるタトゥースタジオ、彫り師の中から私を選んで来てくださった目の前のお客さん一人ひとりに、どれだけ丁寧に向き合えているかだと思います。

 

 

 

 

タトゥーは生活必需品ではありません。
多くのお客さんにとっては、一生に一度の大きな決断です。

 

 

 

例えば、5万円のタトゥー。

彫師側からすれば日常的な金額かもしれませんが、お客さんにとっては、必死に貯めたお金かもしれませんし、他に使う予定だった大切なお金かもしれません。

 

5万円だって、3万円だって、1万円だって、決っして軽い金額ではありません。

 

 

 

 

日常的に針を持つ仕事だからこそ、彫師は「肌に刻む」という行為の重みを忘れてしまいがちです。

 

でも、自身の肌に一生残るものを刻むというのは本来相当な覚悟が必要な行為です。

 

 

 

 

最近、「どれだけ稼げるか」「自分が彫りたい作品」ばかりに意識が向いている彫師が増えているように感じます。

 

本当に必要なのは、技術だけではなく、接客やホスピタリティ、空間づくり、お客さんの感情を読み取る力も含めた総合力だと思います。

 

お客さんの要望を伺った上で、やめた方が良いと思うことはそのまま否定だけをするのではなく、理由を説明し、代案を出す。
お客さんの意図を汲んだうえで、プロとして最適な提案をする。

それが、これからの彫師に求められる姿だと私は思っています。

 

 

 

彫師という仕事は、特別な仕事ではありません。

他の仕事と同じように、礼儀や言葉遣い、気配りが求められます。
むしろ、他の仕事以上にそれが重要な仕事だと思っています。

 

 

彫師が偉いわけでも、崇められる存在でもありません。

 

 

 

もし今、集客やお客さんとの関係に悩んでいる彫師がいるなら、一度立ち止まって考えてみてほしいです。

お客さんは何を求めているのか。
自分は、どんな彫師になりたいのか。

 

 

私自身も、まだまだ反省することばかりです。
それでも、人としても、彫師としても成長し続けたい。

 

「一生残るものを、この人に任せたい」

 

そう思ってもらえる彫師であり続けるために、これからも真摯に仕事と向き合っていこうと思います。